トップページ > 静岡才能人 > いわた用水・事務局長“長島康男さん”
‐生きもの調査をするのはどうしてですか?
「農」の大切さをわかりやすく子ども達に伝えるには、作物を育てるための農地周辺の環境も一緒に調べることが必要なんです。
生きもの調査もしながら、そこには多種多様な生きものがいて、その上で自分達の命が成り立っていること、人間が食べていくためには土の中にいる小さな生きものが必要で、それを壊してはいけないんだよということを体験して理解してもらいたいと思います。
まずは生きものがこんな所にこんな風に住んでいるんだという事を知ることが大切ですね。
‐いわば食育なんですね?
美味しいお米はたくさんの生きものがいる豊かな田んぼでつくられます。人間とごはんと生きものの関係で言うと、
【1杯のご飯には3000~4000粒のお米が使われていて、稲株で言うと3株、おたまじゃくし35匹が必要】だと言われています。田んぼが生きものを支え、生きものが田んぼを支えているんですね。
多くの種類の生きものたちが、食物連鎖などの自然界のバランスが保ち、共生できる環境づくりは、自然界で生きている全ての生きものにとって、重視しなければならない重要課題です。最近良く聞く「生物多様性」ですね。昔田んぼに住んでいた生きものたちをもう一度田んぼに戻す試みを行っていて、全国各地でも始まっていますよ。
図:人間とごはんと生きものの関係
‐生きものと田んぼ、私たち人間には重要な関係性があるんですね。
農薬で草もなく虫もいない所で育つ農作物より、生きものが過ごしやすい所で育つ農作物の方が多少見た目が悪くても安全で安心ですよね。
ところが、農産物を生産する場においては、農産物に害を与える全ての生きものは、それぞれ「雑草・害虫・害獣・害鳥」と呼ばれ、生産の場から排除されてきました。
でも、本来雑草は、昆虫などの住みかとなり、益虫・害中・タダの虫は捕食しあって、バランスを取っています。その中には雑草の種子を食べる昆虫もいます。
このバランスが崩れない様に自然と共生した農業が、今求められているんです。
‐農業は自然と共生できないんですか?
なかなか難しいところですね。
農家が生活していくためには、除草剤や農薬を使用する農法となって、今まで多くの生きものを殺してしまったり、農地周辺の環境を悪化させてしまってきたわけです。
収穫量や手間を考えれば仕方のない事なんですけど、昔の農法に戻していくにはどうしたらよいかを地域の方々と模索しているところなんです。
大量に生産しなくても良いように、みんなが農業に関われるようなしくみを作らないと…。政府には農村環境、景観に税金を使ってほしいですね。実際海外ではそういう動きもあるので、日本も真似してほしいと思っています。