トップページ > 静岡才能人 > ガラス工芸家“寺田光晴さん”
‐あづみ野ガラス工房の修行時代について、くわしく聞かせてもらえますか。
修行時代というと、苦労のあった下積み時代のように聞こえがちですが、一番好きなことをしていましたので、苦労したなあと感じたことはほとんど記憶にないですね。僕の場合、苦労という言葉は当てはまらないと思います。(笑)
むしろ、工房に勤務していた頃は、毎日がガラス漬けの日々だったので、とても充実していました。密接に接する事から得られる、新たな発見が多かったためだと思います。
‐毎日が、ガラス漬けという表現も凄いですね。
一方、大学時代は制作時間や設備の制約が多くて、とてもストレスがたまりやすい時期でした。教え方に関しても悪い意味での放任主義でしたので。友人たちの話を聞く限りでは、他の美大もやはり、似たような感じでしたね。これは、本当にもったいないことだと思います。
それでも、上京したことによって、トップレベルのものを見ることができたことは、いまでも大きな財産になっています。日本の美術事情は、ほぼ東京一極集中ですから、東京以外の地域との格差がたいへん大きいです。今でもなるべく行くように心がけてます。
とにかく何事も直接見たり、会ったりすることは身になるものだと、今でも強く感じます。振り返ると、制作したくても十分にできない大学時代が一番の苦難だったかもしれません。
‐様々な体験を経て、現在、作品づくりで大切にされていることは、ありますか?
最近は、とにかく美しいもの、おもしろいものを作るぞ!という考えは薄くなってきました。
この考え方で制作をした場合、自己主張ができて、結果的にスッキリした!みたいな作風になってしまう可能性がとても高かったからです。
現在は、自分の作品が設置されたら、どんな佇まいを漂わせるだろうか?ということを気にしながら、制作しています。
ガラスは御存じのとおり、まわりの光を取り入れたり、景色を透かしてみせます。
作品が周囲の空気と調和することで、見てくれる人との関係が上質なものになればと思っています。